夜間の徘徊防止
認知症があっても、近所を散歩して自宅まで帰ってこられる人もいますが、夜間に外に出られてしまうと家族は休まる時間がありません。
日中は歩行がヨロヨロしていても、急に夜中になるとシャキッと歩き出す認知症の方もいます。
夜間に認知症のある家族が、1人で外に行かないように対策をしましょう。
介護保険では、徘徊感知機器をレンタルすることができます。
ベットの足元の床にセンサーの入ったマットを設置し、ベットから移動するときに別の部屋にいるご家族にチャイムやメロディ、ランプの光などで知らせるタイプは、普段、トイレが自立している方には不向きかもしれません。
夜中にトイレに行くたびに、センサーが反応してしまいます。
玄関やドアにセンサーを設置して、前を横切ったりドアを開閉したときに知らせてくれるタイプのものは、屋外に出てしまう認知症の方には有効です。
複数の出入り口があるケースを想定し、センサーが複数用意されているタイプのものもあります。
介護保険の認定をうけていれば、1割負担の方で1ケ月800円ほどでレンタルできます。
最近では、センサーが感知しスマホに知らせてくれる商品もあります。
金銭的に余裕があれば、セコムなどのホームセキュリティーを導入しても良いでしょう。
両親と同居を始めた礼子さん(仮名)50歳。
礼子さんは結婚後、転勤の多い夫と一緒に引っ越しを繰り返していました。
お正月やお盆などに里帰りはしていたけれど、20年以上両親とは離れて暮らしていました。
両親とも75歳を過ぎ、病気や下肢筋力の衰えがあって介護が必要な状態になりました。
礼子さんの子供たちは、社会人や大学生となり独立。
夫は単身赴任でいいと言ってくれています。
礼子さんは思い切って両親と同居をすることに決めました。
同居を始めて1ケ月。
夜中に玄関をガチャガチャ開ける音が聞こえて、2階の寝室から玄関に行ってみると、父親が外に出ようとしているではありませんか。
時刻は深夜2時。
いつもはぐっすり寝ている父親。
「こんな時間にどこ行くの?」
「仕事に行くんだよ。」
え~!!
急になにを言い出すの。
礼子さんは突然のことでびっくりしたけれど、落ちついて冷静な口調で「今日は仕事に行かない日だよ。」と伝えました。
その日から、礼子さんはゆっくり眠ることができません。
玄関はカギを二重にして、父親が1人で外に出られないようにしましたが、やはり安心して眠ることができません。
このままでは、礼子さんの体がもちません。
そこで、ケアマネジャーに勧められ、玄関に徘徊感知機器を設置しました。
礼子さんの父親は介護保険で要介護1と認定されています。
特に介護サービスは利用していないけれど、福祉用具のレンタルは可能です。
今回レンタルした商品は、フランスベット㈱の「Reha tech 認知症外出通報システムおでかけキャッチWS-01」です。
本体ユニット1ケ、受信機1ケ、認証キー2ケがついています。
認証キーを持っている人が玄関を通っても、音は鳴りません。
認証キーを持っていない人が通ると、音と光と画面表示で知らせてくれます。
今のところ、玄関以外から外に出たことはないので、センサーは玄関のみに取り付けました。
礼子さんの父親は、介護保険の負担割合は1割負担なので、1ケ月880円のレンタル料金で徘徊感知機器を設置することができました。
本体ユニットや受信機の数を増やすと、レンタル料金も上がります。
本体ユニット3ケ、受信機3ケ、認証キーが2ケの場合は、1割負担で1ケ月2,420円です。
徘徊感知機器を設置してから、礼子さんの父親は不思議とまだ一度も深夜に外に行こうとはしていないのですが、礼子さんの精神状態は落ちつきました。
心配で熟睡することができなかった礼子さんが、夜ぐっすり眠れるようになったのです。
良かったですね、礼子さん。