高齢者が増えれば認知症患者も増える。
2020年9月現在、日本の65歳以上の高齢者の人口は3,617万人になり、総人口の28.7%が高齢者となりました。
100歳以上は 80,450人。
2012年は認知症患者が462万人おり、65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症でした。
2020年の認知症患者は約602万人、65歳以上の高齢者の6人に1人が認知症と言われており、2025年には約700万人、5人に1人が認知症になると見込まれています。
認知症と物忘れの違い
食べた食事の内容を忘れるのは、物忘れです。これに対し、食事を食べたことそのものを忘れてしまうのが認知症です。
認知症には、代表的なものでアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症があり、それぞれの特徴を理解しておくことが必要です。
アルツハイマー型認知症
認知症の中でも、一番多いタイプがアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症でも、初期の頃はある程度身の回りのことは自分でできるし、記憶力もあります。
しかし、認知症の症状が進むと、少しずつ短期記憶が失われていくのが特徴です。
同じことをなんども聞いてきます。
自分の親であれば、「さっきも言ったでしょ!」と言いたいところですが、そこはぐっとこらえて、もう一度答えてあげましょう。
さらに、症状が進行してくると、事実と違う話をしたり、家の中で探し物をすることが増えるかもしれません。
事実と違う話をしても、なるべく否定せずに話を聞いてあげましょう。
探し物をしている時には、一緒に探してあげましょう。
とは言っても、認知症の親と一緒に暮らしていると、毎日やさしくはできませんよね。
つい、怒鳴りたくなることもあるでしょう。
認知症の方は、怒られた内容は忘れても、相手が怒っているのは覚えていることが多いです。
ですから、「ウチの娘は怒ってばかりいる。」「ウチの嫁は怖い。」などと、他の人に話してしまうのです。
介護施設に入所している認知症のある方でも、たくさんいる職員の中で、キツイ職員とやさしい職員のことはちゃんと見分けがついています。
認知症が重度になると分からなくなってしまう場合もありますが・・・
一緒に住んでいる家族を泥棒呼ばわりする。
認知症が進んでくると、一緒に住んでいる身近な家族のことを、「息子に財布を盗られた。」「大切にしまっておいた着物を盗られた。」「嫁に通帳を盗られた。」と、泥棒扱いすることがあります。
一生懸命親の介護をしているのに、泥棒扱いされればショックですよね。
しかし、それらは認知症という脳の病気からくる特有の症状なのです。
財布を盗られたと言われたら、一緒に探して、見つけてあげましょう。
財布が見つかれば、安心して落ち着く場合もあります。
認知症の母親と同居を開始したケイ子さん(仮名)62歳。
ケイ子さんは、ご主人との2人暮らしです。
最近ひとり暮らしをしている母親の様子がおかしいなとは感じていました。
ある日、「誰かが家に入ってきて通帳を盗っていった。」と言うので、一緒に探したところ、いつもしまってあるタンスの引き出しに通帳は入っていました。
しばらく様子をみることにしましたが、日に日に忘れっぽくなっていく母親を心配し、夫の了解を得て、一緒に暮らすことにしました。
一緒に暮らし始めて3ケ月。
毎日同じ話を繰り返す母親に、イライラしながら生活していたケイ子さん。
とうとう円形脱毛症になってしまいました。
美容室で指摘されて、確認すると、首の上のあたりに2ケ所も大きな円形脱毛ができていたのです。
心配になったケイ子さんは、母親と一緒に認知症の専門医の診察を受けました。
とてもよい先生で、ケイ子さんの話を傾聴し、受診の度に認知症の方に対する対応の仕方をやさしく指導してくれたのです。
母親と同居して1年を過ぎたころには、ケイ子さんもお母さんの対応に慣れ、同じ話には返事だけして聞き流し、なるべく否定しないようにして関わっていました。
今では、認知症の方への理解も深まり、以前よりストレスなく一緒に生活できているそうです。
もちろん、円形脱毛もすっかり治りました。
認知症という病気に理解があり、家族のケアも熱心にしてくれたベストドクターに出会えたことが、ケイ子さんの転機になりました。
良かったですね、ケイ子さん。