介護保険の区分変更はどういうときに申請するのか
介護保険を申請すると、認定調査を受けてからしばらくすると介護保険証が自宅に届けられてきます。
介護保険証には、介護度や有効期間が記載されています。
介護保険の認定の結果で、利用できる介護サービスや介護保険の限度額が決まるのですが、介護保険の有効期間がある間に、体の状態が悪化して介護の手間が増えたときに、更新時期を待たずに介護保険の区分変更の申請ができます。
現在の身体状況に合った介護度を認定してもらうために、また認定調査を行い医師に主治医意見書を記載してもらいます。
最近、利用者さんのご家族から、入院した直後に「病院の人から介護保険の区分変更の申請をするように言われた。」という声をよく耳にします。
確かに入院した直後であれば、日常生活や服薬管理などの介助を要し介護度は上がることが多いでしょう。
介護度が変わるることで、メリットとデメリットがある
介護度が上がることでメリットとデメリットがあります。
例えば、入院した時に要介護2だったとします。
もう、自宅での生活が難しい状況であれば、特養(特別養護老人ホーム)の申し込みには要介護3以上でなければできませんから区分変更の必要性はあるでしょう。
また、退院後に自宅で生活するとしても、「介助量が増え今よりも介護保険サービスを多く使いたい。」、「今の介護度では限度額を超えてしまいそうだ。」という場合も、区分変更をして介護度が上がることで、在宅生活が継続できる場合もあるでしょう。
しかし、入院中にリハビリを実施して、退院したときには入院前と同じくらいの身体状況に回復している場合もあります。
その場合、例えば自宅で生活している方でディサービスやショートステイを利用していた方が、介護保険の区分変更の結果、要介護1→要介護4と判定された場合など、介護度が上がると今までと同じように介護サービスを利用しても1回の利用料金が上がってしまいますので、負担が多くなります。
介護保険では介護度の重い人がそれだけ介護の手間がかかると考えられていますから。利用できる限度額も増えますが、1回の利用料金も介護度が上がるほど高くなるしくみになっています。
要支援1と認定されていたえい子さん(仮名)72歳。
えい子さんは、外出時にはシルバーカーで歩行ができます。
ある日、シルバーカーを押して買い物に出掛けたときに、強風にあおられてシルバーカーごと一緒に転倒してしまいました。
痛みで動けずいたところ、近くにいたタクシーの運転手さんが救急車を呼んでくれました。
検査の結果、大腿骨頸部骨折と診断され、翌日人工骨頭挿入術が行われました。
手術直後は歩けませんから、すべてにおいて介護が必要な状態です。
家族は病院のスタッフから勧められて、市役所へ介護保険の区分変更の申請をしました。
退院の予定は3週間後でしたので、すぐに認定調査が行われました。
しかし、えい子さんはリハビリを行い、予定の3週間を待たずに18日間の入院生活で無事退院しました。
退院後のえい子さんは、入院前とほぼ変わらず自宅で生活できているようです。
退院した翌日、介護保険の区分変更の結果が届きました。
結果は「要介護3」
つまり、えい子さんは入院前と退院後の介護の手間はほとんど変わらないのに、介護度は「要支援1」→「要介護3」と大きく上がってしまったのです。
その結果、今まで週1回利用していたディサービスの料金が大きく上がってしまいました。
しかし、良いこともありました。
シルバーカーで外出することに不安があったため、車イスを介護保険でレンタルできたのです。
車イスは原則「要介護2」以上の人でなければ、レンタルできないので・・・
要介護3の有効期間は1年間ですから、このまま1年間要介護3のままで介護保険を利用するのか、今度は軽く判定してもらうために区分変更を申請するべきなのか、えい子さんも悩んでしまいますね。