介護に正解はないのだ

介護分野で勤務し20年。自宅で介護をしている方や介護職員のみなさんに、役に立つ情報を発信していきま~す。

訪問看護事業所は正当な理由なく、訪問看護の提供は拒否できない。

訪問看護とは

訪問看護とは、看護師などが居宅を訪問して、主治医の指示や連携により行う看護のことをいいます。(療養上の世話または必要な診療の補助)

訪問看護師が訪問看護ステーションの自動車の前で立っているイラスト ...

訪問看護事業所の看護師は、病気や障害があっても、自宅で最後まで暮らせるように多職種と連携しながら療養生活を支援します。

サービス提供拒否の禁止

訪問看護事業所は正当な理由なく、サービス提供を拒むことはできません。

訪問看護事業所だけではなく、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)や居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)なども、介護保険法の運営基準で同じようにサービス提供拒否の禁止が定められています。

訪問看護の場合は、健康保険法並びに老人保健法に基づき、指定訪問看護の事業の人員及び運営基準が定められています。

「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」では、

第六条 指定訪問看護事業所は、正当な理由なく指定訪問看護の提供を拒んではならない。

と定められています。

「あの利用者さんは嫌い。」「あの家族はうるさいから行きたくない。」などの理由では、サービス提供を拒むことはできません。

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第七条では、指定訪問看護事業所は、利用申込者の病状、当該指定訪問看護ステーションの通常の事業の実施地域(当該指定訪問看護ステーションが通常時に指定訪問看護を提供する地域をいう。)等を勘案し、自ら適切な指定訪問看護を提供することが困難であると認めた場合には、主治の医師への連絡を行い、適切な他の指定訪問看護事業者等を紹介する等の必要な措置を速やかに講じなければならない。」と定められています。

 つまり、提供を拒否する正当な理由としては、利用申し込みに応じきれない場合と、利用申し込み者の居住地が実施地域範囲外である場合、そして、その他利用申し込み者に対して、自ら適切な指定訪問看護を提供することが困難な場合です。

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 老健(介護老人保健施設)を退所予定の和子さん(仮名)70歳。

和子さんは、大腸癌の手術をして、ストーマを造りました。

退院後、しばらくはディケアと訪問看護を利用して、自宅で生活していましたが、ストーマの管理が難しく、老健に入所していました。

しかし、ストーマの管理以外は、自立した生活ができるために、老健の相談員より退所して自宅で生活するように勧められたのです。

老健の相談員が、以前利用していたディケアと訪問看護の事業所に電話をして、利用再開したいことを伝えました。

ディケアと訪問看護の管理者は、いったん受け入れをOKしたのですが、その数日後、両方の管理者より利用お断りの電話があったのです。

 

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理由は、「和子さんの夫がうるさいから。

訪問看護の管理者は「本当は断ってはいけないのだけれど、どの看護師も和子さんの家には行きたくないと言っています。」と言って断ってきました。

和子さんの夫は確かに口うるさく、人に好かれるタイプの人ではありません。

しかし、それは奥様の体を心配してのこと・・・

事業所側は、サービス提供拒否をしてはいけないと運営基準で定められているはずです。

事業所さんに断られたら、家に帰れないんじゃないのかい?

他の事業所をあたってみるわ~

その後、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、他の事業所に事情を説明し、受け入れてくれるディケアと訪問看護を見つけることができました。 

和子さんは、老健を退所して、自宅で生活できるようになりそうです。