介護老人保健施設とは
介護老人保健施設は、「入所中にリハビリを行い自宅へ帰れるようになりましょう。」というリハビリ施設になります。
骨折や脳梗塞などで、歩行が困難になった利用者さんが、3ケ月~6ケ月ほど専門職による個別リハビリを受けて、自宅に帰ることを目的としています。
介護老人保健施設の理学療法士などが、入所中の利用者さんや家族と一緒に自宅へ行って「家屋評価」を行い、利用者さんが自宅で自立した生活ができるように、福祉用具の提案などの助言もしてくれます。
老健リセットのための老健ショートステイの利用とは
先日、新人のケアマネジャーより相談を受けました。
自分の勤務している事業所と関連のある介護老人保健施設に入所している利用者さんが、施設を退所して同じ介護老人保健施設のショートステイを1ケ月利用するので、ケアマネジャーをやってほしいと頼まれたそうです。
「老健リセットのための老健ショートステイの利用」は介護保険法に抵触してしまうと思い、その新人ケアマネジャーには断った方がいいのではないかとお伝えしました。
しかし、同じ経営者が運営している介護老人保健施設なので、断れないと・・・
介護老人保健施設には施設ケアマネジャーが在籍していますが、ショートステイは在宅サービスなので、介護老人保健施設のショートステイを利用する場合でも在宅のケアマネジャーが計画書を作る必要があります。
介護老人保健施設は、なるべく入所者を回転させて、ベット回転率を上げたり、自宅へ帰して在宅復帰率を上げたいと考えています。
そうすることで、介護老人保健施設のランクが上がり、入所者全員と国に対して高い介護報酬を請求することができます。
そのため書類上は一度退所したようにみせて、実は同じ施設のショートステイを利用し「ベット回転率」と「在宅復帰率」を上げたいのでしょう。
新人ケアマネジャーはしかたなく、市役所に居宅サービス計画作成依頼届出書を提出しました。
介護保険で在宅サービスを利用する場合は、必ず「居宅サービス計画作成依頼届出書」を市区町村の高齢福祉課など介護保険の係に提出する必要があります。
これによって市区町村では、どこの事業所のケアマネジャーが利用者さんの担当をするかが把握できます。
その時に市役所の職員から、
「この方は毎年この季節になると一度老健を退所されていますよね。」
と言われたそうです。
嫌な予感・・・
しばらくして市役所の職員より、その利用者さんのケアプランなど第1表から第7表まで提出するように言われたそうです。
介護保険の第1表~第7表とは
第1表 居宅サービス計画書(1)
・ケアプランの1枚目です。本人や家族の生活に対する意向を記載します。
第2表 居宅サービス計画書(2)
・ケアプランの2枚目です。目標や利用する事業者のサービス内容、家族の役割などを記載します。
第3票 居宅サービス計画書(3)
・ケアプランの3枚目です。週間予定表になります。
第4表 サービス担当者会議の要点
・介護保険のサービスを利用開始した時や、介護保険の更新時には必ずサービス担当者会議を行います。サービス担当者会議を行うのが難しい場合は、書面で事業者などに意見を求めなければいけません。
第5表 居宅介護支援経過
・ケアマネジャーはモニタリングなどの結果を支援経過に記載しなくてはいけません。
第6表 サービス利用票
・毎月の利用予定が載っています。これをもとに、介護事業者は利用者さんに介護サービスを提供をします。
第7表 サービス利用票別表
・1ケ月の介護保険を利用した分の金額が記載されています。
ケアマネジャーは第1表~第3表(ケアプラン)と、第6表、第7表は利用者さんに交付しなくてはいけません。
これら第1表~第7表をもとに、市区町村では利用者の自立支援に資する適切なケアプランになっているかなどの点検を行います。
これを「介護給付適正化事業」といいます。
厚生労働省ではこの介護給付適正化事業について、
「介護給付の適正化を図ることにより、利用者に対する適切な介護サービスを確保するとともに、不適切な給付が削減されることは、介護保険制度の信頼感を高めるとともに、介護給付費や介護保険料の増大を抑制することを通じて、持続可能な介護保険制度の構築に資するものである。」
として、平成20年度から適正化事業の全国的な展開を図っています。
介護保険の利用が増えて、65歳以上の高齢者の年金や40歳以上の方から徴収している介護保険料も年々上がっているのが現状です。
介護保険制度はズルをしないできちんと利用しなければ、いずれ私たちの税金が高くなってしまいます。
あまり知られてはいませんが、「介護給付適正化事業」は必要な制度であると思います。