住所地特例とは
介護保険では原則として、自分の住んでいる住所地の市区町村が保険者となります。
しかし、この原則通り運用すると、介護保険施設が多い市区町村は介護保険給付費が膨れ上がり、財政を圧迫することになります。介護保険施設の少ない市区町村と財政上の不均衡が生じます。
こうした事態を回避するため、住所地特例が設けられています。
利用者の方が他市区町村の施設に入所して、施設所在地に住所を移しても、施設所在地ではなく今まで住んでいた市区町村が保険者となります。
住所地特例の対象の施設は、
・特養(特別養護老人ホーム)
・有料老人ホーム
・ケアハウス(経費老人ホーム)
・サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
となっています。
都会の持ち家(A市)に住んでいたきみ子さん(仮名)85歳。
きみ子さんは、ある程度、自分のことはできるけれど、3年前に夫が亡くなってからなんとなく心細い生活をしていました。
地方に嫁いでいる娘さんが心配して、娘さんの家の隣町に新しくできたサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に入居を勧めました。
きみ子さんも今まで寂しかったこともあり、持ち家は処分して、娘さんの家から車で20分ほどのところにあるサ高住(B市)に入居することにしました。
住所はそのサ高住の所在地に変更しました
住み慣れた土地を離れたのはちょっぴり寂しいけれど、娘さんの勧めでサ高住に入居してから、毎週末に娘さんが面会に来てくれていました。
それから3年。
88歳になったきみ子さんはだんだん足腰が弱り、サ高住での生活が難しくなってきました。この頃は、認知症の症状も現れてきています。
娘さんが住んでいる市内の特養(特別養護老人ホーム)(C市)に入所申し込みをしていたところ、順番がきて特養に入所できることになりました。
住所は特養がある住所地に変更しました。
さあ、この場合は保険者はどこになるでしょうか?
答えはA市です。自宅のあったA市が保険者となり、介護保険給付をします。
ですから、介護保険の更新時はA市に更新申請書を提出することになります。
医療保険も同様に、市区町村の財政上の均衡をはかるため、住所地特例が設けられています。
きみ子さんの場合は、後期高齢者医療保険なのでA市がある県の広域が保険者となり、国民健康保険の人はA市の国保が保険者となります。
娘さんの家がある住所地に一度住所を移してから施設に入所した場合は、娘さんの住んでいる市区町村が保険者となります。