医療保険と介護保険では、介護保険が優先
在宅で介護サービスを利用する場合、介護保険の対象者であれば、通常は介護保険を利用します。
介護保険にある介護サービスの中には、医療保険で利用できるものと同じ内容のものがあります。
例えば、訪問看護の利用をする場合、医療保険でも訪問看護サービスはあります。
しかし、介護保険の対象者であれば、介護保険が優先ですから、介護保険制度の訪問看護を利用することになります。
介護保険の認定を受けていても、医療保険で訪問看護を利用する場合がある。
厚生労働大臣の定める疾患の方の場合、訪問看護を利用する場合は介護保険の認定をうけていても、医療保険での利用となります。
厚生労働大臣の定める疾患とは、末期のガンをはじめ、脊髄小脳変性症や多系統萎縮症などの難病があります。
以下の病気の場合は、介護保険の認定を受けていても、訪問看護は医療保険になります。
- ①末期の悪性腫瘍
- ②多発性硬化症
- ③重症筋無力症
- ④スモン
- ⑤筋萎縮性軸索硬化症
- ⑥脊髄小脳変性症
- ⑦ハンチントン病
- ⑧進行性筋ジストロフィー症
- ⑨パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害がⅡ度又はⅢ度のものに限る)をいう)
- ⑩多系統萎縮症(綿条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレガー症候群をいう)
- ⑪プリオン病
- ⑫亜急性硬化性全脳炎
- ⑬ライソゾーム病
- ⑭副腎白質ジストロフィー
- ⑮脊髄性筋萎縮症
- ⑯球脊髄性筋萎縮症
- ⑰慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- ⑱後天性免疫不全症候群
- ⑲頚髄損傷
- ⑳人工呼吸器を使用している状態
40歳から64歳の人の場合は?
介護保険は40歳から申請できますが、40歳から64歳の人が介護認定を受けることができるのは、厚生労働省が定める特定疾患(16疾患)の人だけです。
厚労省が定義する介護保険の特定疾病は、「心身の病的加齢現象と医学的な関係があると考えられる疾病、そして加齢とともに生じる心身の変化が原因で、要介護状態を引き起こすような心身の障害をもたらすと認められる疾病。」とされています。
平たく言うと、加齢が原因の病気ということになり、16疾患が対象になっています。
①がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
②関節リウマチ
⑤骨折を伴う骨粗鬆症
⑥初老期における認知症
⑦進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
⑨脊柱管狭窄症
⑩早老症
⑪多系統萎縮症
⑫糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
⑬脳血管疾患
⑭閉塞性動脈硬化症
⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
40歳から64歳の人で介護保険対象の方でない人(16特定疾患以外の人)が訪問看護を利用する場合は、医療保険での利用となります。
訪問看護を利用する場合には、医師の指示書が必要
医療保険、介護保険ともに、訪問看護を利用する場合には、医師の指示書が必要です。
医師の指示書があって、はじめて訪問看護師は利用者さんの自宅を訪問することができます。
難病のあるテル子さん(仮名)67歳。
テル子さんは、難病がありほぼ寝たきりの状態です。
介護保険は要介護5の認定を受けています。
要介護5の認定を受けて、介護保険をめーいっぱい使っても、自宅での生活は厳しいものがあります。
実際は介護保険で使える分の3倍くらいの介助量が必要です。
介護保険で足りない分は、家族が介護したり他のサービスで補っていきます。
テル子さんは、障害者手帳1級のため、医療保険はマル福(無料)になります。
そして、厚生労働大臣の定める疾患の1つである多系統萎縮症という難病なので、訪問看護は医療保険を利用します。
訪問看護ステーションからの訪問リハビリも、医療保険の対象となります。
テル子さんは週2回の訪問看護と、週2回の訪問看護ステーションからの訪問リハビリを利用しています。
どちらも医療保険で利用できますので、マル福であるテル子さんには支払いの負担はありません。
訪問看護の利用が、介護保険か医療保険になるかは自分で決めることはできず、制度によって定められています。
介護保険と医療保険では、同じ訪問看護の利用でも、支払う金額が違ってきます。